【表の解説】首腰でもっとも多い病気である腰部脊柱管狭窄症や腰椎すべり症に対する手術には、大きく分けると除圧術と除圧固定術の二つがあります。どちらも、神経への圧迫をとりのぞく「除圧」をおこなう手術で、違いはその後に金属ねじなどで「固定」をするか否かです。そのため、メリットやデメリットは固定の有無により異なります。どちらの方法を選ぶかは医師の判断となり、まれに医師によって術式選択が異なるケースもあります。
【表の解説】首腰でもっとも多い病気である腰部脊柱管狭窄症や腰椎すべり症に対する手術には、大きく分けると除圧術と除圧固定術の二つがあります。どちらも、神経への圧迫をとりのぞく「除圧」をおこなう手術で、違いはその後に金属ねじなどで「固定」をするか否かです。そのため、メリットやデメリットは固定の有無により異なります。どちらの方法を選ぶかは医師の判断となり、まれに医師によって術式選択が異なるケースもあります。

■手術は「除圧術」と「除圧固定術」がある

 手術には、神経への圧迫を取り除く「除圧術」と、除圧に加えて背骨を金属ねじなどで固定する「除圧固定術」があります。

 それぞれ解説しましょう。まず、除圧術のメリットは、痛みなどの症状が改善するうえ、脊椎の動きを制限しないこと。体内に金属などを入れる手術ではないこと。再手術の際に除圧固定術を選択することもできることです。デメリットは、再び狭窄が起きる可能性があることです。

 除圧固定術のメリットは、痛みなどの症状が改善することに加え、固定により同じ場所の再発を防ぐことができる点です。デメリットは、椎間板を取って金属ねじなどで固定するため、その椎間板の機能は失われ、動きが悪くなること。骨が完全につくまで数カ月から1年経過をみる必要があり、その間のインプラント破損の際には再手術が必要になる可能性があることです。手術した箇所に隣接する椎間に負荷がかかり、狭窄やヘルニアが起きることもあります。

 秋田県立循環器・脳脊髄センター脊髄脊椎外科診療部部長の菅原卓医師はこう話します。

「除圧術を選ぶのが一般的ですが、腰椎に不安定性があれば除圧固定術をおこないます」

 不安定性の定義はむずかしく、患者の年齢や活動度、筋力、狭窄の部位、患部に隣接する背骨の状態、骨のもろさなどによって医師が判断します。

■病院によって術式が変わる可能性がある

 除圧術と除圧固定術のどちらにするか、医師の判断が分かれやすいのは、腰椎すべり症で腰椎の不安定性が軽度の場合や、背骨の左右外側にある神経の出口(椎間孔)が狭くなる腰椎椎間孔狭窄症など。つまりこれらは、病院によって術式が変わる可能性があるのです。

 手術を受けるとなれば、その医師や病院とは長い付き合いになります。治療の選択肢や手術のリスクなどを十分に説明してくれる、信頼できる病院を見つけたいものです。

(文・小久保よしの)

【取材した医師】
稲波脊椎・関節病院 院長 高野裕一 医師
秋田県立循環器・脳脊髄センター 脊髄脊椎外科診療部 部長 菅原卓 医師

稲波脊椎・関節病院 院長 高野裕一 医師
稲波脊椎・関節病院 院長 高野裕一 医師
秋田県立循環器・脳脊髄センター 脊髄脊椎外科診療部 部長 菅原卓 医師
秋田県立循環器・脳脊髄センター 脊髄脊椎外科診療部 部長 菅原卓 医師

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