僕の小学校から同級生の友達が、国立大学の医学部の教授なんですが、彼が飲み会の席でたまたま「高校の先生から『受けろ』って言われて成績だけよくて受けに来る子がたくさんいるんだよね」という話をしたんですよね。だから、そういうはっきりと医者になろうという明確な目標がないまま、「学校の先生から言われて来ました」みたいな学生が、少しずつ医学というものに興味を持って成長していくストーリーならありかなと。とりあえず1話描いて、反響がまあまああったので連載になったという経緯なんですよね。

高校時代に勉強ができたという理由で医学部に入学する主人公(c)Norifusa Mita / Cork

大塚:医者になろうという思い入れがそんなにないまま成績が良くて医学部に入ってきた子は、たぶん増えていると思うんですよね。僕が医学生だった二十何年前は、クラス100人を見回してもそういう子の話はほとんど聞かなかったんですけど、最近はそういう学生に出会うことが全然珍しくない。成績が良かったのでまずは医学部に入って、医者になれば高収入とか食いっぱぐれないとか、心配がないという志望動機の子がいる。

その中でコツコツやれる子はいいんですけど、途中でドロップアウトしてしまう子たちが医学部では問題になっているんです。『Dr.Eggs』の主人公の円(まどか)君みたいに、いろいろ面白いと感じてくれればいいお医者さんになるんでしょうけれど、それが見つからないまま留年を繰り返してしまう人も問題にあがっている。僕も大学教授という立場で『Dr.Eggs』を読みながら、どうやったら学生のモチベーションを上げていけるか、参考にさせてもらっています。学生さんの本音がわかるマンガ、そういう視点でも読ませてもらっています。

三田:ありがとうございます。

同級生の教授に「こういう子が医学部に入って最初に何が必要?」と聞いたんですよ。そしたら「まず一人にならないことだね」と言うんですよ。「何かしらサークルに入らなきゃダメ。とにかく何かに入って先輩と後輩の上下関係を築ける子じゃないとダメ。ひとりぼっちだと、だいたいやめるんだよ」と。ああ、それなんだなと思って、まず最初にサークルに入るところから描こうと思いました。

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