それにはわけがあります。
ママンはうちから少し離れた場所に居着いていた元野良ちゃんですが、当時、その辺りに猫に意地悪する人がいたんです。たまたまそのことを知って、すぐに保護したのですが、冷たくされたせいか心を閉ざしてしまったのです。その心の傷は容易に癒える感じではなく、新たな家族を見つけるのは厳しい状態でした。
けれど、ママンは“猫が大好き”だったのです。以前の過酷な環境でも、何回か出産もしたようです。ママンには雄猫はすべて手玉に取ってしまうような魔性の女の面もありました(笑)。あとからデッキに来て家に迎えた、体の大きなたぬきちという雄猫をすぐに陥落させました。たぬきちは、ママンに寄り添い優しく接し、とてもいい旦那ぶりを発揮したので、今は夫婦のように、“ふたりだけ”でうちの3階の一室に暮らしています。朝夕の“猫夫婦”のごはんは、私がお世話係として3階まで運んでいるんです。
猫の個性や背景はそれぞれ。だから個々にあったお付き合いや、彼女たちができるだけストレスを感じず無理のない環境作りが大事だな、と思っています。ママンはそうしたことを私にあらためて教えてくれた気がします。今も部屋を開けると、シャーっといわれますけどね。でも、たぬきちと一緒にくつろぐ姿は、とてもかわいらしいです。
■ここが俺の幸せな場所
ボロの話に戻りますが、しばらく、家に入れるタイミングを見計らっていました。
でも、庭でくつろぐ姿があまりに気持ちよさそうなんです。たとえば、屋根からデッキに張ったオーニング(日よけシェード)をまるでハンモックみたいにして、その上でぐたーっと昼寝したり、少し暑い時はデッキに直にぺたっと寝てみたり。
ボロが来てから他の野良ちゃんは庭に来にくくなってしまったと思うけれど、ボロの散歩中にそーっとやってくる子たちを、何匹か保護して家に入れ、里親を見つけました。他の野良ちゃんは、どんなにシャーシャーしていても、しばらくするとスリスリして窓から家を覗き寂しそうに「いれて~」と鳴くのです。ボロも窓から覗きますが、「あ~?お前ら今日も家の中か」みたいに超然としているんですよね。そこが大きく違いました。