少子高齢化、働き方改革、グローバル化、医療情報の氾濫…。コロナ禍以降、それまで緩やかだった社会状況の変化が加速している。今後数十年の医師と医療のあり方にも少なくない影響を与えそうだが、どう対応していけばいいのだろうか。発売中の週刊朝日MOOK「医者と医学部がわかる2023」の巻頭特集「医師と医療の未来を考える」を、2回に分けてお届けする。前編では、医療・介護分野に詳しいニッセイ基礎研究所主任研究員の三原岳氏と、東京工業大との統合を発表した東京医科歯科大の前学長、吉澤靖之医師に話を聞いた。
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◆少子高齢化や働き方改革で、将来何が起こるのか
高度な専門知識で病気やケガから人の命を守り、心身の機能を回復させていく。そんな医師のあり方が近い将来、変わるかもしれない。社会保障制度に詳しいニッセイ基礎研究所の三原岳主任研究員は、「まず、医師の働き方が変わる」と話す。
「働き方改革」は厚生労働省が現在、進めている取り組みの一つで、「働く人たち個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で『選択』できるようにするための改革」をいう。さまざまな職種が対象となっていて、もちろんそのなかに医療者も含まれる。
医療者の働き方を見直す。その背景としては、社会全体として働き方に多様性がでてきたことや、医療者の意識や医療ニーズの変化などが挙げられる。さらには少子高齢化と人口減少も大きく関係する。
この記事の写真をすべて見る内閣府の「高齢社会白書 令和4年版」によると、わが国の総人口は1億2550万人(2021年10月1日現在)で、65 歳以上人口は3621万人。総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は28.9%で、国民の3.5人に1人は高齢者という比率になる。
「人口のピークは10年で、そこから微減しており、予想では35年からは激減します。待ち受けているのは、団塊の世代が寿命を迎える“多死時代”です。ただし、人口が減っても団塊ジュニアが高齢者になっていくため、医療の需要はしばらく高いままだと考えられます」(三原さん)
医療を必要とする人口が減れば、当然ながら社会における医療の需要は減る。参考になるデータとして、厚労省の「医師の需給推計」がある。大まかに説明しよう。