ラボに立つ粂昭苑さん
ラボに立つ粂昭苑さん
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 山中伸弥教授(京都大学)が開発したiPS細胞を使って糖尿病患者を救う治療法をつくりだそうとしているのが、東京工業大学大学院生命理工学院教授の粂昭苑さんだ。患者に必要なのはインスリン、それを分泌する膵臓の細胞を実験室で効率よくつくるにはどうすればいいか。昭苑さんは、その研究を長年続けてきた。夫の和彦さんは名古屋市立大学大学院薬学研究科教授。実は、2002年に前職の本大学発生医学研究センターの教授に就任したとき、和彦さんは同センターの助教授(現在は准教授と呼ぶ)に採用された。同じ研究室で妻が教授で夫が助教授というケースは、日本初ではなかっただろうか。

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 新しい時代を切り開いたこの「就職」は、どのようにして実現したのだろう。(聞き手・構成/科学ジャーナリスト・高橋真理子)

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――米国の研究大学では、夫婦ともが研究者の場合に二人とも雇用することは珍しくないそうですが、日本では配偶者のことなどお構いなし、というより一緒に雇用するなどとんでもないという考え方が長らく支配的でした。結果として、大学に雇用されるのは夫で、同じところで妻が研究をしたければ今でいう非正規雇用のような立場となるケースが多かった。そんな状況に風穴をあけるべく、九州大学が配偶者帯同雇用制度を導入して話題になったのが2017年です。ところが、その15年も前に熊本大学は夫婦帯同雇用をしたのですね。しかも、妻のほうが教授というのが、実に画期的でした。

 それは、たまたまそうなったんです。

 熊本大学発生医学研究センターが募集していたのは、発生医学を研究する教授で、もっと具体的に言うとヒト胚性幹(ES)細胞の実験ができる教授でした。このとき、私は一家で米国に留学中で、主人と私は専門も違うのでそれぞれ別の大学で研究生活を送っていました。

 ヒトES細胞は、私が米国に留学したころから使えるようになり、私はまさにこれを使って膵臓の細胞をつくる研究をしていました。それで応募したら、当時のセンター長の須田年生先生(のちに慶応大学教授、現・熊本大学国際先端医学研究機構機構長)が「ご主人も来るなら准教授のポストをあける」とおっしゃってくださった。

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女性のほうが就職は難しいだろうから先に