日本銀行総裁候補として、政府は植田和男さんを起用する人事案を国会に提示した。どのメディアも、就任すれば「戦後初の学者出身」日銀総裁になる、と伝えている。そのとおり、植田さんはアカデミズムの世界をずっと歩んできた。
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植田さんは1951年生まれ、東京教育大学附属駒場高校(教駒、現・筑波大学附属駒場高校=筑駒)出身である。東京大学理学部、経済学部を経て、同大学大学院経済学研究科で学んだ。留学先のマサチューセッツ工科大学大学院ではPh.D.(博士号)を取得している。その後、大阪大学助教授、東京大学助教授、教授となって、マクロ経済学や金融論などを講じた。定年後は共立女子大学ビジネス学部教授をつとめている。
この間、大蔵省財政金融研究所主任研究官、日本銀行政策委員会審議委員をつとめ、ゼロ金利政策や量的緩和政策の導入に関わっていたので、日銀とは縁が深い。
今回の日銀総裁人事で驚いた人たちがいた。教駒OBである。現総裁の黒田東彦さんも、同校1963年卒のOBだからだ。
日銀総裁のいすは、教駒の先輩から後輩に引き継がれることになる。
ちなみに、以前、日銀の副総裁候補として教駒OBの名前があがったことがある。東京大と一橋大の名誉教授の伊藤隆敏さん(1969年卒)だ。
伊藤さんは消費税の増税で財政再建をはかるという、インフレターゲットを唱えていた。こうした主張を評価し、2008年3月、福田康夫首相(当時)は伊藤さんを副総裁に起用する人事案を国会に提示する。衆議院は同意したが、参議院では野党4党の反対多数により不同意となった。伊藤さんは日銀副総裁になれなかった。
日銀総裁の新旧交代話に戻そう。
現総裁、黒田さんの教駒時代の同学年には、衆議院議長の細田博之さん、元・経済産業事務次官の村田成二さん、元・国際協力銀行総裁の近藤章さん、元・運輸省運輸審議官の土井勝二さん、元・警視総監の石川重明さんなどがいる。黒田さんは1967年に大蔵省に入省した。その翌年、教駒で1学年下の後輩、林正和さんが大蔵省に入省した。2003年、林さんは財務事務次官に就いている。そうそうたるメンバーが並ぶ。