「そこで、産業界で活躍されているOG、OBから、女性がどう期待されているか、どんな仕事があるのか、メッセージを出してもらう。次に、女性教員の子どもを持ったときのサポート体制などを伝える。最後に現役の女子学生に工学部を選んだ理由や学校生活について語ってもらう。トイレを快適にするためにはどうすればいいかを考えたくて工学部に入った女子学生もいて、非常に面白い。日々の生活に直結した女性ならではの視点だと思います」(同)
物理を外して受験できる
島根大学は今春、同大初の工学系学部「材料エネルギー学部」を開設すると同時に、6人の女子枠を設けた。
今、島根県は先端金属素材による産業創生を目指している。
それに対して、「地元大学として、従来の金属中心の材料工学に化学や情報分野もミックスして地元産業に強く、新しい波を起こすような人材を育成していくことが大きな目標です」と、島根大の肥後功一理事は新学部開設の意図を説明する。
最初から女子枠を設けたことについては「新しい時代の工学部を先取りするような理念、つまり、本学全体のダイバーシティーを引っ張っていくような気持ちを込めました」。
それについて、材料エネルギー学部設置室の三原毅室長は、こう補足する。
「工学部に女子学生が少ないことについて、どの大学も強い問題意識を持っていると思います。特に機械、電気、材料の分野の女子学生は非常に少ない。なので、常に女性エンジニアが不足している。特に大手企業は女性比率をなんとか上げようと真剣に考えています。全国的にそのような背景がありますから、新学部のスタート時から、それに対応できる制度を設計しました」
女子枠の募集は共通テストを課す学校推薦型選抜である。ユニークなのは、共通テストの理科の科目、物理、化学、生物のなかから二つ選べばよいことだ。つまり、物理を外せる。これは工学部の入試では珍しい。
「極論すれば、高校で物理の授業をとらなくても、化学と生物の点数がよければ工学部に入学できるわけです。これについては、かなり議論したのですが、優秀な女子高生は薬学部にいくことが多い。そういう学生をとっていくためには女子枠を設けるだけでなく、入試科目の設定も含めて、強くアピールしていく必要がある。そこまでやらないと、なかなか優秀な女性が工学部に目を向けてくれないと、われわれは認識しています」(三原室長)