AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
【画像】AERA「現代の肖像」に登場したのん。創作のエネルギーは「怒り」の感情だという
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鳴かず飛ばずのムード歌謡コーラスグループ「山田修とハローナイツ」。長年活動を共にしてきたが、変わりばえのしない日常に最近ではメンバー間にもすきま風が吹きがち。そんな中、巡業先の東北の田舎町で歌手志望の女の子と出会い「ハローナイツ」に加入したいと直訴され──。
こう聞くと中年世代の人生後半戦での一発逆転の夢をのせた心温まるストーリーと思ってしまうが、一筋縄ではいかない。なぜなら「ハローナイツ」のメンバーがあまりにも濃い面々だから。
リードボーカルが大平サブロー(めちゃめちゃ歌が上手い)、リーダーの山田修役に「コント赤信号」の小宮孝泰、バックコーラスがラサール石井、渡辺哲、でんでん、有薗芳記。歌手志望の久間部愛役ののんさんにとって、このバックコーラス陣を背負って歌うのは相当のプレッシャーだったのでは?
「すごい緊張感でした。でも、こんな素敵なメンバーが集結する映画はまたとないと思いましたし、もし作られたとしても私にこの役が舞い込んでくるかはわからない。やりたい!と思ってやりました」
本作は、劇作家・演出家の水谷龍二とラサール石井、小宮孝泰によるユニット「星屑の会」が1994年から25年にわたって上演した舞台「星屑の町」シリーズ(全7作)の映画化だ。「ハローナイツ」のメンバーは舞台の第1作から不動。息のあったアンサンブルで「恋の季節」「中の島ブルース」などの昭和歌謡の名曲を、まるで本物のコーラスグループのように聞かせてくれる。
「歌はめちゃめちゃ難しくててこずりました。でも、コーラスグループって衣装も華やかでかわいくて、共通の振り付けがあって。そのレトロさがポップでキュートで、今の時代に新鮮だなと思いました」
その言葉通り、アコースティックギター一本で歌う「新宿の女」から、ガールポップスの王道路線のオリジナル曲「シャボン玉」まで、歌手としてののんさんの魅力も堪能できる。撮影は主に埼玉、東京、岩手で行われた。のんさんのセリフも東北弁だ。
「方言の音源は全部菅原大吉さん(山田修の弟役。宮城県出身)が吹き込んでくれて、菅原さんの声を聞いて台詞の練習をしました」
岩手とは縁が深いのんさん。今年の東京五輪の聖火ランナーとして岩手を走る。