「障害者だって根性がねじ曲がった人は多いですからね」と笑うあそどっぐさん。月に一度、福岡市で開かれるお笑いライブの舞台に立つ(撮影/井上有紀子)
「障害者だって根性がねじ曲がった人は多いですからね」と笑うあそどっぐさん。月に一度、福岡市で開かれるお笑いライブの舞台に立つ(撮影/井上有紀子)

 東京2020の開催が迫り、パラリンピックの注目度も上がっている。しかしそれが必ずしも障害者への理解につながるかというと、そうとは言い切れないようだ。健常者はどのような視点でパラリンピックを楽しみ、どのように障害者への理解を深めればいいのだろうか。AERA 2020年2月17日号の記事を紹介する。

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 障害者スポーツに詳しい順天堂大学准教授の渡正(わたりただし)さん(40)は大学院生の頃、体育館で研究のため車いすバスケットボールの選手に取材依頼をすると、外に出ようと提案された。向かった先は、そばにあった喫煙室。

「意外だと感じた瞬間に、障害者はたばこを吸わない、普通の人とは違うものだと思っていた自分に気付きました」

 だが、誰もが日常生活で障害者と出会い、気付けるわけではない。渡さんは「日本で障害者が注目される有名な場と言えばパラリンピックと24時間テレビ。この二つが障害者と『出会う』場となっているのはどうなんでしょう」と疑問をもつ。

 渡さんが提案するパラリンピックの楽しみ方は「障害をいかに生かして競技しているかに注目すること」だという。

 パラリンピックの種目数は五輪の約1.6倍。障害の種類や程度によってクラス分けされているためだ。例えば陸上でも膝のない人、膝下のない人などに分かれ、足を股関節から回すように走る人、膝から蹴り上げるように走る人などクラスによって走り方は違う。

「なんでそんな走り方をしているのだろう、ブラインドサッカーなら目が見えないなかどうやって合図を送っているんだろうと人体に注目することから障害を知るのも手です」

 渡さんはこう期待する。

「スポーツを通して共生社会の実現を目指せば、スポーツができない人が置いていかれることを頭に入れておくべきでしょう。障害の状態も付き合い方も、人それぞれですが、少なくとも障害を知識として知れば、黒人への理解が進み差別が解消に向かったように、差別意識は緩やかになるのではないでしょうか」

 障害者の多様性が理解されず、印象を押しつけられるのは、過去にもあった。ベストセラー『五体不満足』の著者、乙武洋匡さん(43)は言う。

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