東京・日本橋にあるWORKAHOLIC(ワーカホリック)は、オフィス家具の専門店。特に「高機能チェア」と呼ばれるワークチェアの取り扱いが豊富で、チェアコンシェルジュと呼ばれる専門家が常駐する。ここに並ぶ椅子は、人間工学に基づいて作られていて、座面の高さと長さ、背もたれの角度、アームレストの位置などが調整できる機能を持つ。
長くサステイナブルに働くことを考えるとき、何と言っても土台になるのは健康な体だ。腰痛、肩こり、血流の悪さなどが引き起こす不調で仕事に支障が出ては、元も子もない。
チェアコンシェルジュの伊藤僚範さんが説明する。
「自宅の椅子は、デザイン重視になりがち。デザインチェアと呼ばれる椅子は、長時間の作業には向いていません」
体の大きさや作業内容、体の悩みによっても選ぶ椅子は変わる。店舗では一人ひとりに合わせた椅子選びをコンシェルジュが手伝ってくれる。ここでは共通する正しい座り方について、伊藤さんに聞いたポイントを紹介したい。
まず大事なのは、椅子に深く座ること。背もたれが背中のS字をサポートしてくれて、5度から10度ぐらい後ろにリクライニングし、背もたれに体を預けた状態が理想的だ。
次に、肘の角度が90度になるように机と座面の高さを合わせる。身長が低いとかかとが床から浮いて太ももが圧迫されるので、フットレストなどに足を置いて調節するといい。肘の位置はなるべく体の重心近くに。アームレストがあれば、体重の約12%あると言われる腕の重さを、椅子にも逃がすことができる。
盲点なのはモニターの位置だ。デスクトップと比べてノートパソコンはモニターの位置が低く、上から覗(のぞ)き込む形になる。頭が前に出ると、首への負担が増す。
「人間の頭はボウリングの球ぐらいの重さがあります。体の上にしっかり頭がのるようにしましょう。ノートパソコンの場合、机の上に置く傾斜台を使うと、肘や肩の位置は変えずに、視線を上げることができます」
高機能チェアは数万円から20万~30万円程度と安くはないが、体に痛みが出てからでは遅い。生産性がアップすれば元も取れるし、後々の医療費を減らすことに繋(つな)がるかもしれない。(編集部・高橋有紀)
※AERA 2020年2月17日号より抜粋