東京都現代美術館で、東京オリンピック・パラリンピックの公式アートポスターを集めた「東京2020公式アートポスター展」が開催中だ。展示されているポスターの一つ一つが、現代のアートと社会の多様性を反映しているという。
* * *
一生のうち、たぶん二度は見られないだろう。東京都現代美術館(江東区三好)のエントランスホールで貴重な展覧会が開かれている。開催まで180日を切った東京オリンピック・パラリンピックの公式アートポスターを紹介する「東京2020公式アートポスター展」だ。
オリンピックの公式ポスターといえば、前回1964年の東京オリンピックの公式ポスターを思い浮かべる人も多い。太陽を意味する真っ赤な丸だけをあしらったロゴマークなど、亀倉雄策が手がけたシンプルなデザインが、今もグラフィック界の大傑作として語り継がれている。
五輪の公式ポスターは20世紀の初頭の大会あたりから作られるようになったものだ。テレビやラジオなどのメディアが発達していなかった当時は、「大会を知らせる」ことが一番の使命だった。
やがて、メディアがより広く普及していくなか、公式ポスターの役割も広がっていく。大会の「特色」を伝えるポスターに変わっていった。
「68年のメキシコ大会以降、『公式アートポスター』という概念が出てきたと言われています」(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会広報局・植田聡子さん)
たとえば、84年のロサンゼルス・オリンピックではロバート・ラウシェンバーグやデビッド・ホックニーといったアーティストたちがデザインを担当していたりする。
今回、公式アートポスターの制作アーティストとして選ばれたのは、漫画から美術、写真、書道まで、さまざまなジャンルにわたる人気アーティスト19組。
公式アートポスターのアーティスト選定委員のひとりで、東京藝術大学大学美術館館長・教授を務める秋元雄史さんは言う。
「いろいろな人たちに広く見られるものだけに、漫画、書道など、2次元で展開できるカテゴリーの作家を広く集めようということになった。私自身は、今の日本や世界を代表するアーティストで、今回のオリンピック・パラリンピックについて、自分なりのイメージを広げられる人がいいと考えて選定しました」