巨大なホールを埋めた女性から黄色い歓声が上がる。若い世代に絶大な人気を誇るヒプノシスマイク。アウトロー、暴力のニオイ、世間への怒り。ヒップホップが持つそんなイメージを大きく覆した「ヒプマイ」の魅力をレジェンドZeebraが語る。
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ヒプノシスマイク、略してヒプマイ。CDは軒並みオリコントップや上位、動画の再生回数は2700万回超。昨年9月にあった大阪城ホールでのライブは満席で、全国198館と台湾の10館であったライブビューイングにもファンがつめかけた。20代以下では知らない者はいないほどの存在だ。
歌手でも、バンドやアイドルグループでもない。よくあるアニメなどの劇中歌でもない。レコード会社による“定義”は、「音楽原作キャラクターラッププロジェクト」だ。
ヒプマイが世に出たのは2017年9月。ジャンル分けするなら「男性声優らによるラップ音楽」と言える。現在は18人の声優が6チームに分かれ、CDを発売。その楽曲は、Zeebra、サイプレス上野、UZI、ラッパ我リヤ、R-指定といったヒップホップ界のスーパースターたちが提供している。
音楽性とともにファンを引き付けるのが、独自の世界観だ。ヒプマイの世界でカギとなるのが、人の精神に干渉するという特殊なマイク「ヒプノシスマイク」。イケブクロ、ヨコハマ、シブヤ、シンジュク、オオサカ、ナゴヤの各ディビジョンが、領土(テリトリー)を賭けてラップバトルを繰り広げる。作り込まれたキャラクター設定や華麗なイラストも、人気の原動力となっている。
ヒプマイはなぜ熱狂的に支持されるのか。日本のヒップホップ界のレジェンド、Zeebraはこう分析する。
「ヒップホップは元々、『オタク文化』的な性格が強い。だからこそ、アニメというオタク文化に源流を持つ声優さんたちと融合することで、大きなうねりがうまれたんでしょう」
ヒップホップとオタク文化は正反対の存在に感じるが……。