そもそもブライアンもロジャーもフレディを大切に考えている。91年の逝去から約30年間、フレディの光輝に彩られたイメージを保つのに努めてきた。アダムは、ブライアン、ロジャーを尊敬し、フレディを心底から愛する。ステージでもそう発言し、讃える気持ちがステージ全体ににじみ出ていて、クイーンに連なっていることに歓びを感じているようだ。

 そのあり方は、新旧のファンたちの分け隔てのほとんどない友愛の輪ともパラレルだ。それゆえ、ライヴ会場は、一つの星雲のように、「何か」に包み込まれながら幸福な時空になっている。

 ステージは最終盤にさしかかり、再びフレディの映像が出てきた。腰を抜かしたのか、椅子に倒れ込む女性の姿も。映像は「エーオ」で会場に感激のコール&レスポンスを成り立たせる。「ウィ・ウィル・ロック・ユー」「伝説のチャンピオン」でフィナーレに突入。全体を包み込んでいる「何か」とは、フレディの、あるいはフレディへの、幾尋もの深く大きな愛情のように思われた。フレディ・マーキュリーという大きな存在の裏返しとしての、あまりにも大きな不在は、いまや伝説と化して格別に広大な存在となって再び降り注ぎ、アダムという、いわば「プリンス・オブ・クイーン」を新たな家族として祝福しているようだった。

(朝日新聞社/米原範彦)

◇「クイーン+アダム・ランバート」の「ラプソディ・ツアー」日本公演は、30日のナゴヤドームで終了。「クイーン展」(朝日新聞社など主催)が30日から3月22日まで、横浜・アソビルで開催される。

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