大学院生は研究しながら、診察をする。学費に年間数十万円かかる。専門医とは、3~5年間程度、指定の病院で研修を受け、特定分野の知識やスキルを認められた医師のこと。

 文部科学省は2019年、全国99大学の108付属病院に給与を支払うべき「無給医」の実態調査を要請した。その結果、大学は「無給医」が少なくとも2千人以上存在することを認めた。だが、実際にはこのほかに、「合理的な理由があって支給しない」とされた「無給医」が3500人以上、「まだ調査中だが無給医の可能性がある」が1300人以上いる結果になった。無給医は、計7千人に上る可能性がある。

 無給医かどうかは、各大学の判断に委ねられている。「現在も調査中」とする日本大学は、AERA本誌の取材にこう答えた。「なぜ無給なのかについては、病院内で医師やスタッフといった立場によって意見が異なるため、統一的な回答はしかねます」

 文科省は大学に「無給医」への賃金の支払いと待遇改善を求めている。給与を支給していない医師に賃金を支払うことは、大学病院にとっては損益を意味する。国立大学病院長会議は昨年、無給医に賃金を払えば、「病院ごとに年間、数億円規模の影響が出る」との見解を示した。

 そこで、AERA本誌は病院経営に詳しい都内の税理士の協力のもと、文科省発表で無給医数が多い20大学について、「無給医」の実態を試算した。大学が認めた「無給医」に加え、「合理的な理由で給与を支払わない」とした医師も含めて、適正な給与を支払うと、多くの大学と大学病院が赤字に転落する可能性があることがわかった。各大学が支払うのは8億~45億円。給与を全額支給した場合、10大学・大学病院は黒字から赤字に転じる。(ライター・井上有紀子)

>>【週5労働なのに「3日と申告しろ」 「無給医」にかかる圧力と日本の医療危機とは】へ続く

AERA 2020年1月27日号より抜粋

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