内科、外科、眼科、耳鼻咽喉科……。数多くある医師の診療科のなかで、皮膚科はどんな印象でしょうか?近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師は、子供のころに「皮膚科ってのんびりしているところだなぁ」と感じていて、医学部に入った当初は小児科志望だったそうです。いまだからこそ語れる皮膚科の魅力を紹介します。
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皮膚科というと、みなさんはどんな印象を持つでしょうか?
私は医学部に入った当初、小児科を志望していたので、まさか自分が皮膚科医になるなんて想像もしていませんでした。皮膚のトラブルはそれほどなく過ごしてきたため、皮膚科になじみがなかったせいでもあります。小学生のころ、一度だけ全身がかゆくなって、隣町の皮膚科まで受診した記憶があります。そこでは、皮膚の表面を少し削り取り、顕微鏡で検査した結果、疥癬(かいせん)というダニが原因の疾患ということでした。たまたまそこのクリニックがそうだったのだと思いますが、子供ながらに当時は「皮膚科ってのんびりしているところだなぁ」と感じたものでした。
医学部に入学し、皮膚科を学ぶようになってわかったのは、皮膚疾患の病名がやたらたくさんあるということ。皮膚疾患は、直接見ることも、直接触ることも簡単にできます。そのため、皮膚の細かな変化を捉えることができ、診断名を細かくわけることが可能です。皮膚病は1000から2000くらい病名があると言われています。すべての疾患を知っているというのは、人間の頭脳には無理なレベルかもしれません。
さて、そういった診断の複雑さから、皮膚科を専門に選ぶ医学生や研修医は、診断の奥深さにひかれて皮膚科に入る人が多いように思います。大学の皮膚科にいくと、そこには診断マニアな皮膚科医がいて、次々と珍しい皮膚病名をカンファレンスで提示していく場面に出くわします。診断マニアが口にする病名に、「そんな病気は知らなかった」とうなることもあります。人の体は複雑で、皮膚も例外ではありません。皮膚の中で起きる出来事が、人それぞれであり、人種や環境が変われば、発疹の見え方も変わります。そんな複雑な変化にみせられて皮膚科医になる人も少なくありません。