「コンビニ百里の道をゆく」は、50歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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自分の未熟さに気付くときは、成長の瞬間でもあります。
先日、母校の中学生を相手に「先輩授業」というものをしてきました。
商社での経験やコンビニ経営について話をすると、生徒たちは食い入るように見つめてくる。みんな、将来のことを考え、そのために今何をする必要があるのかといったことを真剣に考えている様子でした。自分が中学生の頃は全く将来のことなど考えず、授業中もうわの空で、午前中はお腹すいたなあとか、昼からは睡魔と仲良くしていた記憶しかありません。
2022年から成人年齢が18歳に引き下げられ、法的な「大人」が2年近づきます。ですが、若さゆえの感性や無邪気さはかけがえのないものだと思います。社会に出たからこそ見えるものもありますが、見えないからこそ見えているものもある。時に背伸びをしたりすることもあると思いますが、まっすぐ、興味の向くままに動いてほしいと思います。
そうはいっても、18歳を目前にした私がこうした声を聞いたとしたら、きっと「わかった、わかった」と受け流していたでしょう。自分はもう大人で、世の中のことは大体わかっている、と。
ところが、今年51歳を迎える私は、数年前の自分を子どもだったと感じることがあるのです。いったい、本当の意味で
「大人」になるとはどういうことなのでしょうか。
就職、結婚、子育てと経験を重ねると、新しい視点に出合います。社長になった今でも、オーナーの方や社員から学び、自分の未熟さにぶつかることもあります。「あの時は子どもだった」と思うことが、大人に近づいている証しなのではないでしょうか。
生きている限り大人になりきることはないのかもしれません。それが成長を続けているということでもあると思います。成人を迎えられた皆さん、おめでとうございます!
※AERA 2020年1月20日号