「日本海溝を境に、東にある太平洋プレートが西にある陸側のプレートを押し込むのが本来の姿です。しかし、東日本大震災で陸側のプレートが東側へ大きく動いたことで、一時的に日本の陸地も東へ引っ張られるようになりました」(水本さん)

 東日本大震災から間もなく9年を迎える今も、この力は残っている。引っ張られることで一方の地盤がずり下がって生じる断層を「正断層」といい、茨城県北部から福島県南部ではこの正断層型の地震が多発している。

「東日本大震災以降、この地域では従来はなかった正断層型の地震が活発です。11年4月11日の福島県浜通り地震や16年12月28日の茨城県北部の地震もこのメカニズムによるもので、今回も同じです」(同)

 一方、茨城県南部で起こった地震の震源は深さ50~60キロ。

「これは関東平野に沈み込む太平洋プレートや、その上にあるフィリピン海プレートがある位置です。プレートが単独で破断した地震でしょう」(同)

 では、茨城県北部と同様に震源が浅い栃木県の地震はどうか。

「茨城県北部と同じく活断層型の地震ですが、断層の動き方が異なります。栃木の地震は岩盤が横にズレて起きたもので、茨城の地震との関連性は薄いでしょう」(同)

 水本さんによると、3カ所の地震はそれぞれその地域ではよくあるタイプのもので、今回のように同時期に起こることも想定外ではないという。

「東日本大震災のような超巨大地震が周辺地域の地震活動に影響を与えることはありますが、今回の規模では考えられません。三つの地震の関連性は薄いでしょうし、巨大地震の前触れだとも考えにくいですね」(同)

(編集部・川口穣)

AERA 2019年12月23日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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