こうして血圧を下げる行動をコツコツ積み重ねるだけでも、その効果は大きい。1日中変動する血圧をつかさどっているのは、自律神経だ。自律神経とは内臓や血管などの働きを自動的に調整する神経で、活動時に優位になる「交感神経」と、リラックスしているときや睡眠中に働く「副交感神経」で構成されている。交感神経は血管を収縮させ血圧や脈拍を上げ、副交感神経は血管を広げ血圧や脈拍を下げる働きがある。このバランスが崩れると血圧は乱れる。ストレスや緊張をほぐし、高まった血圧を低くする小さな努力を積み重ねることが、血管を守ることにつながる。

 ただし、高血圧の背景に食生活の乱れがある場合には、その改善も欠かせない。なかでも減塩は重要だ。高血圧の治療ガイドラインでは、1日当たりの食塩摂取量を6グラム未満としている。小さじ1杯の食塩が5グラム、日本人男性は1日平均約11グラム摂取しているというから、高いハードルだ。

 東京都健康長寿医療センター顧問の桑島巌医師によると、高血圧には血管内の水分量が増えることで起きる「パンパン型」と、血管がホルモンによって外から締めつけられて狭くなることで起きる「ギュウギュウ型」がある。日本人に多いのは「パンパン型」で7割がこのタイプだという。血液中の塩分濃度の上昇が原因のため、徹底的な塩分対策が必要になる。

「塩やしょうゆの代わりにお酢や香辛料を使うことでも、塩分を抑えることができます」(桑島医師)

 まずは薄味に慣れることが大切。思い切って1週間挑戦すると、これまでの食事の味付けが濃く感じるようになるだろう。(編集部・小長光哲郎)

AERA 2019年12月23日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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