またサントリーも、110年の歴史がある登美の丘ワイナリー(山梨県甲斐市)を含む自社のぶどう畑を「26年までに約2倍の広さにする」(同社広報部)という目標を掲げる。
サッポロビールは年間3万ケース(18年)の販売数を、「26年までに10万ケースまで伸ばす」(同社広報室)。アサヒビールも、子会社を合わせた販売数を25年までに現在の約3倍にあたる2万ケースに増やす計画を掲げており、主要メーカーがこぞって、この先6~7年で販売数を2~3倍に伸ばす計画を打ち出しているのだ。
空前の増産体制には、国内のアルコール離れが進むなか、ワインは消費が拡大している貴重なジャンルという背景がある。日本ワインというブランドが確立されたことで、国内だけでなく海外からの注目度も年々上がり、アルコール業界の“希望の星”となっている。
そして何と言っても、日本ワインが格段においしくなったことが、日本ワインの販売量を増加させている。
「10年ほど前、久しぶりに味わった日本ワインのおいしさに衝撃を受けました。その後もすばらしい栽培家や醸造家がつぎつぎ登場して、日本ワインの質は今も進化していると思います」
日本ワインに魅了され、4年前に四谷・荒木町で専門のバーを始めた「日本ワイン中村」のオーナー中村雅美さんはそう話す。
かつては日本ワインというと、「味が薄い」「水っぽい」などというネガティブな評価が多かった。「湿気が多い日本は、おいしいワイン造りには向いていない」などといった身も蓋もない風評が、まことしやかに語られていたこともある。
それがいまは、例えば白なら「上品」「繊細」などといった評価が目立つように。国際コンクールでの受賞も相次ぎ、日本ワインは、世界中のワイン通から熱い視線を送られるブランドに成長しつつある。(ライター・福光恵、編集部・福井しほ)
※AERA 2019年12月2日号より抜粋