逆に、中国は2017年、日米韓協力を軍事同盟に発展させない確約を韓国に求めていた。北朝鮮の朝鮮中央通信も7月31日の論評で「戦争協定、平和破壊協定は早急に破棄されるべきだ」と主張していた。北東アジアの情勢は、中国や北朝鮮が期待したとおりの展開になりつつある。

 そしてGSOMIA延長を巡り、米韓関係にも深刻な亀裂が入った。米国はスティルウェル国務次官補が20日に来日。状況に応じて、日米韓協議を開いて最後の説得をするつもりだったが、両政府のかたくなな態度が目立った。

 11月6日、スティルウェル氏と会談した康京和外相は「何度も何度も、韓国に失望したと言わないで欲しい」と訴えた。だが、米政府関係者は「ワシントンの韓国に対する空気は非常に悪い」と語る。米側には、在韓米軍の駐留費に対する韓国の防衛費分担金交渉で、「1ドルも譲らない」という声も出始めている。

 米国が、米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱したことを受け、米国と中ロの間の緊張は高まっている。中国は8月、日韓両国に対し、「米国の中距離ミサイルを配備すれば、両国関係に重大な影響が出る」と警告した。

 北朝鮮も米朝関係の停滞で「新しい道を選ぶかもしれない」と牽制している。日本政府関係者によれば、海上自衛隊のイージス艦は今月、北朝鮮の弾道ミサイル発射に備え、日本海に常時展開する態勢に入った。

 GSOMIAが土壇場で延長となったが、安全保障環境の悪化と日米韓のぎくしゃくした関係は当面残ることになった。(朝日新聞編集委員・牧野愛博)

AERA 2019年12月2日号

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