令和の「祝賀御列の儀」は、スマホであふれていた。思い切り高く掲げ、車列を待つ人、人、人。そこに、皇后雅子さまと『ベルばら』を結ぶ点と線を見た。AERA 2019年11月25日号に掲載された記事を紹介する。
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パレードが続いた30分余りの間、皇后雅子さま(55)は輝くような笑顔だった。そして時折、涙ぐんだ。その様子を見て、こんなふうに思った。
雅子さまは、マリア・テレジアの教えを実感したに違いない。
オーストリアの女帝マリア・テレジアは18世紀を生きた人だ。だからこれは、当たり前だが妄想だ。妄想のわけを、書いていく。
テレジアは、末娘マリー・アントワネットをわずか14歳でフランス王太子に嫁がせる。勉強嫌いで人に影響されやすい末娘を案じ、テレジアは手紙を送っては「地位ある者の振る舞い方」を説いた。
その手紙を『マリー・アントワネットとマリア・テレジア 秘密の往復書簡』(岩波書店)で読んだ私は、テレジアの教えをこう理解した。
あなたはあなたでいるだけで尊い存在、と。だから、ただ優しさを示せばよい。そうテレジアは説いていた。
パレードを見ながら、雅子さまに重ねた。「自分は自分でいるだけでよい」。雅子さまはそう実感したのだ、と勝手に納得した。
約11万9千人もの人が集まったというパレード。人々は天皇陛下(59)の即位と、雅子さまが皇后になったことへの喜びを感じ沿道に並んだ。彼らの喜びを、雅子さまは強く実感できた。それだけでなく、その実感が自分自身の喜びになった。自分は自分でいるだけでよいのだと思えた。だから笑顔になり、時に涙になった。そう解釈した。
本を読んだだけで、なぜそのような妄想をするのかと問われたら、答えは一つ。日本に「ベルばら」があるから。そう、私はベルばら世代なのだ。
池田理代子さんによる漫画『ベルサイユのばら』(集英社)は1972年から「週刊マーガレット」に連載され、74年に宝塚歌劇団が上演したことで空前のブームとなった。リアルタイムで漫画を読み、宝塚劇場に足を運んだ一人だから、その世界が体に染み込んでいる。