警察や検察といった捜査機関は、テレグラムやシグナルのようなメッセージアプリを独自に解析しているのかというと、一部を除き専門の業者に依頼していることが多かった。

 今回の薬物事件では、海外に本社がある解析業者の機器が使われ、成功していた。

 これまで警察や検察の依頼でスマートフォンやパソコンのデータ解析をしていたある業者は匿名を条件に、こう話す。

「テレグラムやシグナルは犯罪には必須といわれるほど秘匿性が高かった。しかし、今ではたいていが解析、復元できています。解析するアプリや扱うエンジニアのスキルが格段に上がっていますので。ただ、テレグラムやシグナルも確実に秘匿性のバージョンをあげています。解析できるかどうかの鍵は、スマートフォンもパソコンも使用後、短時間で押収し、解析作業に入れるかですね。初期化されるとかなり手間がかかり、完全に復元できないこともありますから」

 ある捜査関係者は、

「iPhoneは初期化されると復元されにくいと捜査現場ではよくいわれます。薬物や振り込め詐欺の事件で犯人の身柄を確保したときに、現場では『リンゴ、リンゴ!』とよく叫ばれます。アップルのiPhoneだからそう呼ばれるようになったんです。身柄と一緒にiPhoneもおさえないと絶対だめ。捕まる側も最重要の証拠であるスマートフォンを初期化しようと、必死で抵抗して時間稼ぎをします。身柄を取ろうとしたときに隙を与えてしまい、初期化されて捜査が進まないという悔しい思いをしたこともありますからね」

 と振り返る。

「『悪いことをするにはテレグラム』と、あたかも犯罪ツールのような感じで語られていました」

 こう話すのは、元検事の落合洋司弁護士。自身も4台のスマートフォンを持ち歩き、新機種が出るたびに買い求めるという「スマホ好き」だ。

「以前はiPhoneのロック解除の暗証番号の解析は、海外の業者でなければできないといった大きな壁がありましたが、日本の警察、検察もスマートフォンやパソコンの解析は外部の研究機関とも連携して、腕を磨いています。技術は日進月歩で進化しています。テレグラムがメッセージを消去していても、スマートフォン自体に残っているデータ解析で復元できるとも聞きます。ルフィの事件でも条件などによりますが、テレグラムの解析は十分可能ではないでしょうか」

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警察庁の「サイバー特別捜査隊」が加わる