そんな仕事至上主義のアメリカでワーキングマザーは100%ハッピーに働いているかというと、そんなことはまったくありません。子どもを人に預けっぱなしでいいのかとか、給与がそっくり託児費に消えていくのに働く意味などあるのだろうかとか、山ほどの葛藤を抱えています。ですから前出のGallupの調査は「誰がより幸福か」ではなく「誰がより不幸度が低いか」を示しているといえそうですが、ともかく「不幸度を下げるためには働こう」という結果になっているのは、経済的な観点に限って見れば成功なのでしょう。
日本も「すべての女性が輝く社会づくり」というスローガンを掲げ、女性の就業率は上がりましたが、その結果が「子どもがいる専業主婦よりも、子どもがいる働く妻のほうが幸福度が低い」って、悲しくなってしまいます。このままでは、「不幸度を下げるためには仕事を辞めよう」、言い換えれば幸せと経済成長どちらを取るのかという二者択一になってしまいそうです。
日本が、アメリカのようにワーキングマザーの幸福度が高い(と、少なくとも調査結果が示している)状態になるにはどうしたらいいのか──。議論が尽くされている命題ですが、ひとつには「柔軟な働き方を選べるようにする」というのが挙げられそうです。仕事の柔軟性(フレキシビリティー)は、ここ最近アメリカの職場でもっとも重視されている要素のひとつで、現代の若者や子育て世代は給与やキャリアパスよりも職場のフレキシビリティーに重きを置くという報道があります。「有給・病気休暇、手当金ありの産休、そして職場のフレキシビリティーが保障されている場合、子どものいる人のほうが幸福度が高くなる」という調査結果もあります。
じゃあアメリカ企業が進めている柔軟な働き方って、具体的にどんなもの? というのは今回は書ききれないので、次回に続きます。
※AERAオンライン限定記事
◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi