「あなたがしてきたのは仕事ではない。あなたは性被害者なのだ」と全ての人に言うつもりはない。ただ、「私が受けたのは性被害なのだ」という声にすら耳を傾けない風潮は、誰を守っているのだろうと不思議な思いになる。日本は世界屈指の性産業大国として知られている。売春防止法はあっても、安全に性を買える社会だからだ。そんな性産業大国だからこそ、私たちは今、立ち止まる時なのかもしれない。「安全な性産業などない」という、この産業が生んだ被害者の声に、耳を傾ける時なのかもしれない。

 ……というようなことを丁寧に議論していく。それが本の力だろう。買う側の話ではなく、この社会で女側を生きている者たちの性の話を、もっともっと言葉にしていきたい。やっぱり出版業は細々とでも続けていきたいと改めて思うのだった。売れたらもっと嬉しいけどね。

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