性産業に関しては、フェミニストと呼ばれる人たちの間でも、センシティブに真っ二つに意見がわかれる。ざっくりではあるが、「性産業はなくならない、だったら安全に働けるためのシステムや法律をつくるべきだ」という立場と、「そもそも性産業に『安全』はあり得ない。需要を縮小すべきだ」という立場だ。

 私は長い間「アダルト産業」の片隅にいた。四半世紀にわたってバイブレーターを販売してきた。ライターとしてAV女優にインタビューをすることもあった。ソープランドやデリヘルなど、様々な風俗現場の取材もしてきたし、私自身が取材を兼ねて買う側を体験したこともある。私としては、女性が安全に性を楽しめる社会になるにはどうしたらいいんだろう……という、その一点で仕事をしてきたつもりだけれど、「お前は底辺にいるんだよ」という扱いをさんざん受けてきたのは事実だ。「いつまでそんな仕事をしているの?」と友人からも同情され、毎日のように男性客から嫌がらせの電話を受け、職種を理由に銀行から融資は受けられず、しまいには女性器を模した作品を展示していたと「わいせつ物陳列罪」の疑いで逮捕までされている。我ながらヘンな人生だ。

 だからこそ「性を仕事にする者を差別するな」と、私は自分ごととして大きな声で言いたい。でも一方で、涼しい顔をして、「セックスもフツーの労働として認めるべき」とはどうしても言えない。女性の体を生きていれば、妊娠の恐怖、性感染症のリスク、筋力差・体格差による暴力の恐怖から逃れるのは難しい。初対面の見知らぬ男性と2人きりの空間で、客に対してイエスもノーも積極的に伝えられる女性はどれだけいるだろう。供給と需要は双子のように歩み、欲望は過激に、サービスは過剰に「成長」していくのは資本主義の宿命だ。今すでに妊婦や母乳が出る女性が働く風俗などが存在しているけれど、これからももっともっともっともっと過激な風俗は次々に生まれてくるだろう。

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性被害の声に耳を傾けない風潮