日常的にしっかりアナログ盤への愛を通底させているレコード・ショップは全国的にみても少なくないし、再評価など関係なく長くレコードで作品をリリースし続けているアーティストも多いだろう。そうした筋金入りの“ヴァイナル・ジャンキー”が、こうしたお祭りに対して距離をとりたくなっても仕方がない。他方、デジタル配信やサブスクリプション・サービスで十分満足している人にはそもそもが関心のない世界かもしれない。
だが、音楽という文化そのものの居場所がどんどん追いやられていると感じる者としては、とにかく音楽に触れるさまざまなきっかけと選択肢がもっとあった方がいい、というのが本音だ。筆者は音楽専門メディアとの関わりが多いが、こうしたカルチャー専門ではないメディアに寄稿するたびに、音楽そのもののシェアが確実に減っている、極端に言えばマイノリティーの文化になっていることに気づく。映画や本の紹介はあっても音楽のページを持たないファッション雑誌も多い。
反目していても仕方がない。クリックひとつで好きな曲が次々と聴ける目に見えないけど便利な音源としてのデジタル。操作がちょっと面倒臭いけど優れたパッケージとして手にとることができる作品としてのレコード。どちらも日常の中に取り入れてみて、初めてそれぞれの良さが理解できるのではないかと近年改めて思う。音楽を楽しむ習慣は、我々の生活の中でもっともっとシェアされていくべきではないか。アナログ・レコードを楽しむ年に2回のお祭りからは、そんな原点をも痛感させられるのである。(文/岡村詩野)
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