ゴロゴロしたり、張ったり、痛んだり……。病気はないのにおなかの慢性的な不調が続くなら、過敏性腸症候群の可能性がある。いまや約1800万人が悩んでいる とされる。症状改善のヒントは、低「FODMAP」食にあった。AERA 2019年10月28日号から。
【図版】おなかを壊しやすい人は要注意!「高FODMAP食」と「低FODMAP食」とは?
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腹の調子がなんだか悪い。張ったり痛んだりゴロゴロしたり、下痢や便秘を繰り返す。けれども、出しさえすれば爽快だ。検査をしても異常なし。もしも、そんな状態に心当たりがあるなら、過敏性腸症候群の可能性がある。
過敏性腸症候群とは、日本消化器病学会の診断基準では、大腸に腫瘍や炎症などの病気がないのに、「最近3カ月の間に、月に3日以上にわたっておなかの痛みや不快感が繰り返し起こる」こと。便の形状から、「便秘型」「下痢型」「混合型」「分類不能型」の四つの型に分けられる。
近年急増中といわれ、日本人のおよそ14%、約1800万人がこの症状に悩んでいるという。もはや国民病といっていい割合だ。患者は女性の方が多く、年齢とともに減ってくることもわかっている。
「満員電車のなかで、あるいは大切な会議の前にこうした症状が出るなら、過敏性腸症候群の疑いがあります。社会的地位が高く、責任の重い仕事をしている人に多い傾向もあり、ストレスも悪化を招く要因になります」
こう語るのは、この病気に詳しい江田クリニック院長の江田証医師だ。
過敏性腸症候群は命に関わる病気ではないものの、症状や不安のために、日常生活に大いに支障をきたすことも少なくない。そして、長い間打つ手がないと考えられてきた。
そんな状況が近年、ある発見によって大きく変わったという。
「2014年に過敏性腸症候群と『FODMAP』に関する研究が発表され、注目を集めました。低FODMAP食で症状が改善することがわかったのです。通常腸によいといわれる食べものが、過敏性腸症候群の人々にとっては刺激になりうることもわかりました」(江田医師)