![小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/3/8/497mw/img_383e606a5f9c897a7602be60a858f25536943.jpg)
![フィクションドキュメンタリー「荒川氾濫」は防災啓発を目的に製作された。http://www.ktr.mlit.go.jp/arage/arage00061.html(撮影/写真部・張溢文)](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/a/0/840mw/img_a0f69ab5d33f5bf4f16ff3779dc1524986957.jpg)
タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
【フィクションドキュメンタリー「荒川氾濫」は防災啓発を目的に製作された】
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台風19号の被害はすさまじいものでした。地球温暖化に伴い、近い将来に起きるであろう台風被害のシミュレーションとほぼ同じ規模とコースの台風だったそうです。つまり、将来起きるかもしれない事態が、今すでに起きてしまったことを意味します。
私は都心の自室に籠城して台風をやり過ごしましたが、荒川の氾濫を恐れていました。東京東部を流れる荒川の堤防がもしも決壊したら、都市機能がまひするほどの被害が出ると言われているからです。
国土交通省の荒川下流河川事務所が平成29年に作成した「フィクションドキュメンタリー『荒川氾濫』」という動画があります。それによると、秩父地方など荒川の上流で3日間で合計500ミリを超える雨が降って下流の堤防が決壊した場合、周辺地域の浸水は水深2メートルを優に超え、水はやがて地下鉄に流れ込んで駅は水没。さらに都心各駅に広がり、東京駅が浸水。夥(おびただ)しい量の水が千代田区、中央区のオフィス街にも流れ込み、首都東京は機能停止。多数の死者と甚大な被害により、日本経済は大打撃を受けるといいます。荒川氾濫は都心で暮らす人だけでなく、日本全体を混乱に陥れるというのです。
動画では上流域で3日間で500ミリの雨量と想定されていましたが、台風19号では各地で観測史上1位の雨量となり、埼玉県秩父市浦山ではわずか半日で470ミリが降り、48時間の雨量は687ミリに達しています。これは動画の想定をはるかに超えるレベル。荒川は今回は持ちこたえましたが、次に同規模の台風が来た時にはわかりません。水害による首都機能停止という非常事態への、政府や都の備えが気がかりです。
「またそんな大げさな」と笑う前に、用心深さは命を守ることを思い出してください。動画は国交省荒川下流河川事務所のホームページで見られます。
※AERA 2019年10月28日号
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