


年齢を問わず、スマホによる視力低下が進んでいる。ごく初期なら回復の可能性もあるが、生活習慣を改善できる人は少ない。少しでも進行を遅らせるために気を付けるべきことは。AERA 2019年10月21日号に掲載された記事を紹介する。
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証券会社に勤める男性(32)は、飲食店でメニューを目から離して見ていたら、50代の上司にからかわれた。
「俺と同じで老眼か?」
まさかと思ったが、スマホの文字や駅の表示などがぼやけることがよくあった。何回かまばたきをして目をこらすと見えるようになる。気になって眼科を受診すると、こういわれた。
「老眼気味になっているので、生活に支障があるようなら老眼鏡を作りますか?」
30代で老眼鏡なんて……。そう思い、「大丈夫です」と断ってしまった。
手元が見えづらい、目がしょぼしょぼする、視界がぼやける……。老眼年齢に達していない20~30代で、老眼のような症状が表れるケースが増えている。神田眼科診療所院長の矢島寿広医師はこう話す。
「こうした患者さんに普段の生活について聞いてみると、必ずと言っていいほどスマホの見過ぎで目を酷使しています」
冒頭の男性も、仕事の情報収集からメールやSNSでのやり取り、動画鑑賞まで「起きている時間の7割以上はスマホを見ている」と自覚している。
目にはオートフォーカス機能があり、対象物との距離に応じ、自動でピントを合わせる。ピント調節に関係するのは、カメラのレンズのような働きをする「水晶体」と、それを支える「毛様体筋」だ。遠くのものを見ようとするとき毛様体筋はリラックスした状態となって水晶体が薄くなり、近くのものを見ようとするときは毛様体筋がギュッと縮んで水晶体の厚みが増す。
一般的な老眼は、加齢によって水晶体が硬くなったり、毛様体筋が衰えたりすることでピント調節機能が低下する。一方、若年層に起きる老眼は、至近距離でスマホ画面などを長時間見続けることで毛様体筋の緊張状態が続き、凝り固まってピントが調節しづらくなる。近くにピントを合わせるときのほうが目に負担がかかるので、画面も文字も小さいスマホは毛様体筋の筋肉疲労を起こしやすい。さらに、ブルーライトによる刺激や、目に入ってくる情報量の多さなども、負担を増大させている。矢島医師は言う。