ヒップホップ・アクティビストのZeebraさんが「AERA」で連載する「多彩な野菜」をお届けします。1997年のソロデビューからトップとしてシーンを牽引し続け、ジャンルや世代を超えて多くの支持を得ているZeebraさん。旬の野菜を切り口に、友人や家族との交流、音楽作りなど様々なエピソードを語ります。
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栗ってとにかくガードが堅いですよね。ものすごくトゲトゲしたいがの中に入っていて、人間のように手がない動物たちはどうやって食べるんだろうと不思議です。カラスみたいにくちばしがあればなんとか食べられるかな。植物のなかでもトップクラス、もはやSPばりのセキュリティーです。
いがを乗り越えても、まだつやつやの硬い皮があって、さらに渋皮がある。そこを乗り越えたものだけが、ご褒美としてあの黄色くて甘い実を食べられる。一番好きな食べ方は天津甘栗ですね。爪で傷を付けて、左右から挟んでパキッとやる、あの一手間がいい。素直にむけないやつに当たると「この野郎……後にしよう」って脇へよけたりして。大人になると、ほかに何もせずひたすら栗をむいてるだけのあの時間って、結構大事だと思うんですよね。
今はむいちゃったやつをパックで売ってますけど、一体どこまで堕落するんだ、と人間の業の深さを感じずにいられません。おいおい、甘栗はむいちゃったらダメだろう……と言いながら、もうアレばっかり食べてるんですけど。
※AERA 2019年10月14日号