姜:改めて思ったのは、戦前の日本はファシズムではなく、内部がバラバラの状態だったということ。唯一、天皇陛下のもとで一つにまとまっているように見えたけれど、かなりセクショナリズムが強かったのではないか。そこがナチスドイツとは大きく違うのかもしれません。

ダニ:「植民地」としての朝鮮半島は天皇直属です。同じ「植民地」でも台湾は内閣直属でした。

姜:そうですね。今、日本人はどうして台湾が親日的なのに韓国が反日的なんだろうと考えますよね。でもそれは、台湾統治と朝鮮半島の統治の組織構造の違いを考えるとわかります。

ダニ:当時の大日本帝国憲法のわずかな権利すら民衆に与えず、総督が天皇の代理人として弾圧できたのが朝鮮でした。朝鮮では総督が代々陸海軍大将であったのに比べ、台湾では大正8(1919)年から昭和11(36)年まで貴族院議員の政治家が続きました。

姜:天皇直属となれば、時の政府も口出しはできません。台湾と朝鮮半島でどうしてこのような統治の違いになったのかが不思議なのですが、天皇統治とはある意味、統帥権が不可侵であるのと同じです。最終的に同化政策の時は、君たちは日本の本土にいる人たちと変わらない、ということになります。天皇の愛顧をみんなにあげるというのは大変な恩恵であるという発想です。それを天皇統治では一方的にどんどん進めていくことになり、朝鮮半島の日本に対する評価が変わってくるわけです。

(構成/編集部・三島恵美子)

AERA 2019年9月30日号より抜粋