お弁当屋さんの店頭やフラッと入った寿司店で、内容と価格の異なる「松」「竹」「梅」の3種類が用意されていたら、あなたはどれを選ぶだろうか。3種類の選択肢が用意されると、多くの人は値段と質が最も高い「松」や、最も低い「梅」を避け、そこそこ安くて品質もある程度いいはずだと考えて、真ん中の「竹」を選ぶ傾向がある。しかし、「竹」が「そこそこ安くて品質もある程度いい」という根拠はどこにもない。

【図解】「つい買っちゃった」追加の買い物が間違った買い物になるパターン

 3月10日に配信した記事「なぜ『レジ前のお菓子』を買ってしまうのか 企業のカモにならないための行動経済学の超基本」と同様、行動経済学の基本を知っていれば、根拠もなく「竹」を選んでカモになることを避けることができる。『今さら聞けない 行動経済学の超基本』(橋本之克・著)から、売る側が利用する「心理」を学びたい。

 3段階の選択肢を示された場合、一番高い商品を買うと、支払うお金が高くなることもあり、損をするリスクを感じる。逆に、一番安い商品では満足できない可能性があり、やはり損をするリスクを感じる。極端な選択による損失の可能性を避けようとして真ん中を選んでしまう心理を、「極端回避性」と呼ぶ。どんな料理がどれくらいの量で出てくるかわからない場合、損失の可能性が先に頭に思い浮かんで、中間の選択肢こそ最もリスクが低いと判断してしまうのだ。

 アメリカの行動経済学者エイモス・トベルスキーが行った、こんな実験がある。「価格も機能も低いカメラと価格も機能も中程度のカメラでは、どちらを選ぶか」と質問すると、回答は半々。次に、価格も機能も高いカメラを選択肢に加え三択にすると、大半の人が中間を選んだ。

 これは、売る側が消費者の「極端回避性」を知っていれば、最も売りたい商品を買わせて利益を上げる方法を取ることが可能になることを意味する。中間の選択肢を値段のわりに質の低いものにして、利益率が最も高くなるようにすればいいのだ。

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「おとり」なしなら冷静に判断できる