何のためにあるのかわからない学校の“ブラック校則”や“謎ルール”。 新学期が始まった子どもたちが、もっと自由に学校生活を送るには──。
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なぜ根拠の曖昧なルールが次々と作られてしまうのか。複数の教員に尋ねたところ、多くの中学や高校では「生徒指導部」の教員たちが考案したルールを職員会議で共有する流れになっているという。中には、恣意的な決定がされる場合もあるようだ。千葉県の公立高校の男性教員(37)はこう指摘する。
「本来は生徒指導部の案を職員会議で検討し、校長が決裁するのですが、生徒指導部の案がそのまま既決事項とされてしまう場合や、部長の教員が単独で決めてしまう場合も少なくありません。私が勤務する高校でも、入学のしおりや掲示物などに、いつの間にか新しいルールが入っていたことがあります。疑問を感じていても、異を唱えるチャンスがなかなかありません」
他方では「やむを得ないものもある」とルールを擁護する教員の声も複数あった。熊本県の小中学校で教員をしてきた女性(60)はこう話す。
「ツーブロックや斜めの前髪など、学校は何か新しいことがはやると禁止する傾向があります。確かにおかしいと思うところはありますが、教員たちの間には『生徒たちの“小さな乱れ”が学校全体の荒れにつながってきた』という、過去の経験から来る不安が共有されており、事前に禁止する場合がある。仕方がない部分もあると感じます」
アエラネットのアンケートでは、教員たちからこんな声も聞かれた。
「高校入試の面接でそれがOKなのか教員は自信がもてないから、厳しい指導や規則になるのもわかる」(男性55歳、高知県、公立中学校教員)
「おかしいとは思うが、守らせないと入試や入社試験に通らないので仕方ない」(男性50歳、宮崎県、公立小学校教員)
このように世間では“ブラック”とされる学校ルールも、学校現場では「必要」とする考えも根強い。だが、ルールを厳しくすることが本当に学校の荒れを防ぎ、入試で生徒を有利にするのだろうか。校則やチャイムをなくすなど先進的な取り組みで知られる、東京都の世田谷区立桜丘中学校の西郷孝彦校長は違う考えだ。