世の非難と闘っている知人もいた。
韓国大手紙・東亜日報の趙修眞(チョスジン)記者。政治部で大統領府や外交省を担当し、フランス留学も経験した国際派だ。今は同社系列の放送局「チャンネルA」で月曜から木曜まで政治・社会分野のコメンテーターを務めている。彼女の論調は明快で「日本の輸出管理規制措置の強化は許せないが、韓国政治家の度を越した日本非難も問題がある」と主張し続けている。
だが、韓国の政治家を批判しようものなら、すぐにSNSなどで「お前は韓国人か」「売国奴」といった罵詈雑言があふれかえるという。
放送後、いつものように学院(塾)に通う中学1年生の長男を迎えに行くという趙記者とコーヒーを飲んだ。趙記者は「大多数の韓国人は私と同じ考えです。だから、会社も私の発言を止めようとはしません」と語った。だが、彼女の顔は暗かった。毎晩、長男を迎えに行く途中、ハンドルを握りながら重い気持ちに沈むのだという。(朝日新聞編集委員・牧野愛博)
※AERA 2019年9月2日号より抜粋