韓国政府が日韓の軍事情報包括保護協定の破棄を決定するなどここ数十年で最悪と言われる日韓関係。日本製品の不買運動の広がりが報道されるなか、韓国の市井の人々は何を考えているのか。朝日新聞前ソウル支局長が現状を報じる。
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日本支配からの解放を祝う「光復節(クァンボクチョル)」が間近に迫る8月半ばのソウル。中心部にある光化門(クァンファムン)付近での「日本製品不買運動」の様子は、日本でも大きく報道された。韓国メディアによれば、日本製ビールの輸入額は6月の約800万ドル(約8億5千万円)から、7月は430万ドルに4割以上も急減したという。実際の売り場はどうなのか。うだるような暑さのなか、ビールを販売している付近のセブン−イレブンをぐるりと回ってみた。
日本大使館そばにある曹渓寺(チョゲサ)裏の店には、入り口のガラス扉に「この店では日本製品は販売しません」というステッカーが貼ってあった。そこから500メートルほど離れた鍾閣(チョンガク)駅そばの店には、日本製ビールはあったが、サービス価格の対象外になっていた。比較的高価な日本製ビールは従来、サントリーのザ・プレミアム・モルツ500ミリリットル缶が4本1万ウォン(約880円)、サッポロのヱビス500ミリリットル缶が3本9900ウォンといったサービス価格で販売されてきた。中年の男性店員に「日本のビールはどうして割引しないの」と聞くと、「社長(店の経営者)が決めたんだろう」と不機嫌な返事。さらに、500メートル離れた仁寺洞(インサドン)にある店では、従来通りサービス価格で販売していた。
一方、光化門近くのユニクロは、日曜日の午後4時過ぎだというのに、1、2階の売り場にいた買い物客はわずか十数人。4人連れの女性客は中国語で会話をしていた。3人は西洋風の顔立ちのバックパッカーだった。でも、そのそばにある日本系の雑貨品店は大勢の買い物客でにぎわっていた。