なぜ、こんなバラバラな状況なのか。

「ヌンチを見ているからだよ」

 私が会った大勢の韓国の知人たちは異口同音に教えてくれた。「ヌンチを見る」というのは、日本語の「空気を読む」という意味に近い。

 40代の韓国外交官は週末、大型スーパーで日本製ビールを買おうとして、妻に止められた。「あなた、こんな時期にイルボンメクチュ(日本製ビール)なんか買って大丈夫ですか」と言われたという。

 知人の一人は「コンビニはフランチャイズ制だから、経営者の判断次第で、日本製品を売ったり売らなかったりするんだろう」と語った。曹渓寺近くのセブン−イレブンの場合、すぐそばには慰安婦を象徴する少女像がある。水曜日ごとに日本に対する抗議集会も開かれている。一方、仁寺洞は土産物品を売る店がひしめき、日本人観光客にも人気の観光スポットだ。そういう「土地柄」が影響したのかもしれない。

 ユニクロの場合、展開しているファーストリテイリング幹部が、7月の記者会見で、韓国の不買運動について「長期的な売り上げに影響を与えるほど長くは続かないと思う」と発言したことが反発を買ったという見方が出ている。実際、韓国でSNSなどを中心に「韓国消費者を軽視するものだ」との批判が上がった。別の知人は「ユニクロはニュースでも取り上げられたし、余計入りづらい雰囲気になった」と語る。ニュースで標的になっていない日本系店舗は普通に営業しているようだ。

 一方、50代の大学教授は8月半ばに一族8人で計画していた3泊4日の札幌旅行を泣く泣くキャンセルした。「航空運賃の一部の77万ウォン(約6万8千円)は戻ってこなかったよ」とぼやいた。本人と父親は大の日本好きで、毎年のように日本各地を訪れてきた。しかし、長男が懸念した言葉が決め手になって断念に追い込まれた。長男は「もし、他人のインスタグラムなどに家族の顔が映り込んだら、大変ですよ」と訴えた。この大学教授と父親はそれなりの有名人だから、社会的に非難を浴びると恐れたのだろう。

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