2年前に参入したエッセンスでも35社70人が利用。当初は週1回ベンチャーに通うという留学スタイルでサービスを開始したが、最近は次世代リーダーの育成に力を入れる企業がフルタイムで3カ月以上留学させるケースが増加。地方の中小企業が幹部候補生を東京のベンチャーに送り込む例もあるという。

 昨年10月、ローカルワークスに加わった松尾さんが、まず驚いたのはメンバーの多様性だ。60歳の元大工もいれば、インターンからそのまま入社した人、大企業からの転職組までバックグラウンドはさまざま。物事が進むスピードやフラットな関係性は予想以上だった。

 連絡はチャットツール。商談も現場に決裁権を持たせているので即断即決。パナソニックでは平社員が社長にダメ出しするなどあり得ないが、ここではアルバイトであっても、社長の判断が違うと思えばすぐに意見することが歓迎される。

 戸惑いもあった。松尾さんがパナソニックでやってきたのは売り先の決まったルート営業で、新規開拓の経験はゼロ。最初は電話一本かけるのも恐怖だった。

「先輩たちが築き上げた販売ルートやパナソニックのブランド力にどれだけ助けられてきたかを思い知らされました」

 3カ月目、立ち上げたばかりの決済サービスの営業担当を1人で任された。顧客を一から探さなくてはならないが、どこにどうアプローチすればいいのか、皆目見当もつかなかった。初の試みゆえに、誰にも成功のセオリーがない。不安が募る。

「そもそも目標として掲げられている数字が達成可能なレベルなのか、うまくいかない原因は自分の努力不足なのか、戦略が間違っているのか。何一つわからないまま1カ月が過ぎ、落ち込みました」(松尾さん)

 苦しい時期を見守ってくれたのは仲介したローンディールのメンターの後藤幸起さん。週報で悩みを書くと後藤さんからこんなメッセージが届いた。

「手足が猛然と動いている時はやることがはっきりしている時です。今は動かし方を考える時。動きが鈍るのは停滞ではなく前進のための準備。逃げることなく思考し続けてください。それが成長につながります」

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