参加者からは多くの質問が飛んだ。
不登校になったとき、周囲の大人にしてもらってうれしかったことについて質問が寄せられると、ゆっくんさんはこう答えた。
「親には不登校の自分をそのまま受け入れてもらい、学校に行けと強制されたことは一度もなかった。苦しんでいるのを見ている側もすごいつらいんですよ。でも、同じように苦しみながらそばにいて待ち続けてくれた」
しろくまさんも言う。
「周囲が否定しないことが大事だと思います。不登校になった頃は自分が一番自分を否定してしまう。十分傷ついているのに、まわりの大人から否定されると苦しくなる。私のときも親はきっと苦しかったと思うんですけど、学校に行けずに家を出て10分後ぐらいに家に帰って来ても母は自然に『あ、おかえり~』と迎えてくれました」
二人の話を受けて、広田さんはこうまとめた。
「『不登校は良くない』とラベリングしてしまうと、その子自身が自分には価値がないと思ってしまう。まわりの人はまず無条件にその子の価値を受け止めてあげることが大事だと思います」
公立中学校の教諭が「どんな学びの場があればいいと思うか」と尋ねたところ、ゆっくんさんは自らの体験を語った。
「僕は中学生の頃、教室に入れなくて保健室登校をしている時期がありましたが、当時は教室復帰ができなくなるということで勉強を教えてもらえず、勉強以外のことしかさせてもらえなかった。勉強はしたいのに教室に入れないから勉強ができない。それがすごく苦しかった」と、さまざまな学びの場があったほうがいいと指摘する。
広田さんも自分の体験を振り返る。
「学校へ行くか行かないか、ゼロか100ではなく、どこで何を学ぶかを自分で選べるような環境があったらいいと思います。iPadひとつで学校の授業やテストを受けられる世の中です。僕は不登校になった中学生の頃、桜美林大学の不登校生支援を受けていました。学びの選択肢が多種多様なものになれば、不登校の概念もなくなると思います」
「不登校を体験していない大人の意見は『おまえに何がわかるんだ』と受け入れてもらえないんじゃないか」という質問に対しては、広田さんがこうアドバイスを送った。
「不登校を経験したからといって、不登校生の気持ちが100%わかるわけではない。不登校になったバックグラウンドもそれぞれ違います。僕はむしろ、不登校の経験がない人に不登校を肯定してもらうことに価値があると思っていて、寄り添う姿勢を崩さなければ、そのお子さんも心のシャッターをむやみにおろすことはないと思います」
■困ったときの主な相談窓口
・文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」
(0120-0-78310)毎日24時間対応、通話料無料
・厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」
(0570-064-556)運用時間は地域によって異なる
(編集部・深澤友紀)
※AERAオンライン限定記事