たくらみ低学年クラス(小学1・2年生)が年度初めに取り組んだ商店街探検プロジェクトでは、京都市の出町商店街についてたくさんの発見ができました。子どもたちはその中から各自調べたいことを一つに絞り調査を進め、最終的に調査結果をプレゼンで発表してくれました。
今回の記事では、彼らがどのような調査を行ったのか、いくつかご紹介したいと思います。
◇時計屋のコッペパン
「あれっ、なんでパンを時計で巻いてるんやろ?」
2年生のTくんが最も興味を示したのは、時計屋さんの店先のショーケースでした。
食品サンプルのコッペパンやドーナツを巻くように展示されている時計の数々。時計とパンは一見関係なさそうなだけに何とも不思議な光景です。
フィールドワーク後のふりかえりでは、いろいろな意見が教室を飛び交いました。
「時計を買ったらもらえるプレゼントなのかも」
「ドーナツの穴にスポッと(時計の表示板が)はまるから見やすいとか」
「パンから外して、そのまま時計を腕にはめやすいからちゃう?」
「いや、ただの飾りで、パンには意味がないと思うわ」
どれもそれらしい意見ですが、あくまで推測の域を出ません。
Tくんはこの疑問を解消するために、お店の方に直接確認することにしました。そして、インタビューの結果、以下の事実が判明したのです。
・時計とパンの組み合わせに意外性があることで、商店街を通るお客さんが立ち止まって見てくれる→結果的に商品の購入につながりやすい
・開閉店時にショーケースを移動する際、時計同士がぶつからないようにクッションの役目を果たしている
あのコッペパンやドーナツには宣伝的な役割と機能的な役割があったのです。彼の報告をクラスメートも感心して聴き入っていました。
またそれと同時に、我々自身が時計屋さんのご主人の術中に見事にはまったことにも気づき、何とも愉快な気持ちになったのでした。
◇アーケードにぶら下がる巨大な魚
「あの魚って、マグロなんかなあ……」
1年生のTくんはアーケードにでんっとぶら下がっている巨大な魚の模型を調査対象に選びました。以前からその存在を知っていたものの、なぜそこにあるのかが改めて気になってきたとのこと。
まずはじめに、あの模型は魚屋さんの場所を示す目印ではないかという仮説を立てました。ただ、実際の魚屋さんは商店街の端っこにあるため、目印として便利でないことに本人もすぐ気づきます。
それに、なぜ数あるお店の中で魚屋さんだけを大々的にアピールする必要があるのか理屈が通りません。
ちなみに本プロジェクトでは、個人追究の時間を確保すべく、保護者にボランティアをお願いし、インタビュー調査を3班に分かれて実施しました。私とは別の班だった彼は、最初は誰に質問すればよいかわからず困ったようですが、該当の模型の下に位置する食料品店のご主人が親切にあれこれ教えてくれたそうです。
そして、あの魚はマグロではなくサバで、それは探究堂が拠点を構える出町エリアが『鯖街道』の終着点であることに由来していることが判明したのです。
Tくんは『鯖街道』というキーワードを手がかりに、お母さんに協力してもらいながらインターネットで調査を進め、翌週の授業で調査結果を報告してくれました。
福井県の小浜と京都を結ぶ街道の総称であり、主に魚介類(特にサバが有名)を京都へ運搬するルートであった『鯖街道』。
鉄道や自動車が普及する以前の時代には、若狭湾で取れたサバは行商人に担がれて一昼夜かけて徒歩で京都に運ばれていたという事実を知って、他の子どもたちも大変驚いていました。
◇風の駅のたぬき
「『決して怪しくありません』って書いてあるのが逆に怪しい!」
2年生のKちゃんは、階段に謎のメッセージが貼られた不思議なお店に注目しました。