ちなみに、土地や建物の売却、株式や投資信託の取引で得た利益は、同じ譲渡所得でも、ほかの所得と分離して税金を支払う「申告分離課税方式」になっている。マンションを売って利益が出たり、株取引で大儲けした年に金を売っても、それらの利益と金の売却益が合算されて課税されることはない。一方、金の取引で売却損が出た場合、その年にほかの譲渡所得や雑所得があれば損益通算できる。

■「孫の誕生日に金」の意外な落とし穴

 金にまつわる税金の問題でもう一つ注意しておきたいのは、孫の誕生日に金貨を買って贈るなど、他人に金を贈与するケース。場合によっては、高額な贈与税がかかってしまう可能性がある。

 贈与税には、毎年の贈与額が110万円以下なら課税されない「暦年贈与」という制度がある。この制度を活用すれば、時価110万円以下の金を孫に毎年贈っても贈与税を課されることはない。

 暦年贈与には落とし穴もある。たとえば、20歳になるまで孫の誕生日に金貨20万円相当を毎年贈ると決めて、実際に贈った場合。のちのちその行為が「20年間、定期的に20万円相当の金を贈る」という形の定期贈与と見なされることもある。
贈与を始めた年に「20万円×20年間=400万円」を贈るという定期贈与契約を結んだと税務署に見なされ、高額の贈与税が課される可能性があるのだ。

 とりあえず金貨は自分で保管しておき、子や孫が成人するときなどに生前贈与の形でプレゼントするのが無難かもしれない。もちろん、何年かに一度、気が向いたときに金貨をあげるぐらいなら定期贈与とは見なされない。

 なお、将来、自分が亡くなったときの相続税対策として、子や孫に高額の金を生前贈与する場合は、「相続時精算課税制度」を使うと、支払う税金を軽減できる。

 この制度は60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子や孫に対する生前贈与を、相続の一環として生きている間に行うもの。税務署に制度の利用を申告すれば、2500万円以下の贈与に贈与税は課されず、2500万円を超えた分だけに20%の贈与税がかかる。

次のページ
生前贈与の形でプレゼント