8月23日公開の「劇場版 おっさんずラブ LOVE or DEAD」。「おっさんずラブ」こそ、いま隆盛する「男×男の恋愛もの」という新ジャンルの旗手だった。「おっさん」たちの恋愛模様が、なぜ働く女性の心をわしづかみにしたのか。
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このドラマの特徴、否、特長としてあげたいのが、登場人物がみな「男と男」の恋愛に偏見を持っていないという点だ。これこそ「ファンタジー」かもしれないと思う。
初回、田中圭演じる春田創一と幼なじみの荒井ちず(内田理央)が居酒屋で話す。「春田」「ちず」と呼び合う関係だ。ちずが「告られたって?」と春田に言う。「でも相手はおっさんだよ、部長だよ」と、春田が答える。ちずはこう返す。
「社内恋愛が嫌なの? 年上だから?」
同じシチュエーションでこう返す自信、私はない。が、「男だからだよー」と答える春田に、ちずは「好きになるのに男も女も関係ないでしょ」と言う。
えらいぞ、ちず。えらいぞ、制作者。ドラマを見ながら、心で拍手した。プロデューサーは、テレビ朝日の貴島彩理さんだった。オンエア当時、28歳。劇場版にも「プロデューサー」として名を連ねている。
ドラマが評判になるにつれ、貴島さんはインタビューを受けることが増えていった。よく語っていたのが、「BL(ボーイズラブ)でなく、今どきの働く男女の恋愛がテーマ」ということだった。「同性であることを忘れるほど素晴らしい人が現れた時、人はどうするのだろうと思ったのが企画の出発点」ということも語っていた。
そのテーマをはっきり打ち出すには、偏見のある人物の存在は不要と判断したのだろう。ドラマの中で、「男×男」という事態に一番戸惑っているのは、春田本人だ。次第に林遣都演じる牧凌太に引かれていくが、気持ちに頭が追いついていけない。ちずと牧との間で、心が揺れたりもする。
視聴者の一人として、春田と同様、事態に追いつけない感じはあった。なぜ、春田は牧に引かれていくのか? 今ひとつ、はっきりしない。