ヒップホップ・アクティビストのZeebraさんが「AERA」で連載する「多彩な野菜」をお届けします。1997年のソロデビューからトップとしてシーンを牽引し続け、ジャンルや世代を超えて多くの支持を得ているZeebraさん。旬の野菜を切り口に、友人や家族との交流、音楽作りなど様々なエピソードを語ります。
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不思議な野菜ですよね、空心菜。見かけるのはだいたい中華料理の炒め物です。ほかの具材と一緒に炒められることも少なくて、せいぜいニンニクぐらい。でも、めちゃくちゃうまい。めったにコラボなんてしない、孤高のソロアーティストみたいな存在です。思い出すのが、アメリカのラッパー、LL・クール・J。彼は1985年、17歳でデビュー。ティーンのスーパースターになりました。90年代に入ると俳優としても活躍するんですが、当初は誰ともコラボをしませんでした。
その頃、ヒップホップのライブが荒れてけが人や死人が出る事態を何とかしようと、ラッパーたちがニューヨークのスタジオに集まって「暴力をやめよう」と呼びかける曲を作ったんです。そのとき別のフロアにLLが居合わせて。すれ違った女性ラッパーのMCライトにそっと「ちょっとリリック書いたから、よかったら使って」と渡したメモが、実際に使われたという話があります。空心菜もそんなきっかけがあれば、他の具材とコラボしたり、いろんな料理に顔を出したりするかもしれません。
※AERA 2019年8月12・19日合併増大号