小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
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7月11日、大阪・天神橋筋商店街では参院選の日程を知らせるアナウンスが流れた (c)朝日新聞社
7月11日、大阪・天神橋筋商店街では参院選の日程を知らせるアナウンスが流れた (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 選挙の時には必ず「若者は政治に関心がない」と言われます。だから投票にも行かないのだと。では自分がいつ政治に関心を持ったかを思い返すと、10代の頃に夜のニュースショーを親と見たのがきっかけでした。時代はちょうど冷戦終結や昭和の終焉など大きな節目を迎えており、その瞬間をテレビカメラが生で捉えてみんなが目撃したのです。当時はテレビは居間にあって、親が見る番組を子どもも見ざるを得ませんでした。大学生になるころには私は「ニュースセンター9時」「ニュースステーション」「筑紫哲也NEWS23」「NHK特集」などを見るのが習慣になっていました。そこへ加えて、初めての選挙が1993年の新党ブーム。「何か新しいことが始まる。自分はその当事者なんだ」という感覚を持ちました。そのあと入った大学のゼミではディベートに明け暮れ、さまざまな時事問題をテーマに議論する毎日。4年生の終わりには阪神・淡路大震災のボランティアにも行きました。つまり、ものを考えることを学ぶ時期に、自分と世の中はつながっているということをごく自然に自覚する環境にあったのです。

 今は手元のスマホの画面で好きなものを見る時代。テレビは情報の中心ではなくなりました。だからやっぱり会話だろうと思います。親が家で世の中のことを話さなければ、子どもはそうした話題に触れることがないし、意見を聞く機会もない。親が投票所に連れていかなければ、子どもは自分もいつか投票するんだとは思わないでしょう。ネット時代だからこそ、家族が行動で示すしかないですね。高2の長男は最近「僕も18歳になったら投票できるんだよね」と言い出しました。投票所で風船をもらっていた子が! と感慨深いです。選挙が終わってからも、気軽に世の中の話をすること。大人の行動が、次の選挙を変えるかも。

AERA 2019年7月29日号