「オレンジワインに法律的な定義はありませんが、基本的には果皮に色素が少ない白ブドウを使って、果皮と種ごと浸したワインを指します。緩やかに果皮の色がワインのなかに抽出され、琥珀色になるのです」
なるほど、色の濃淡はあれ、どのオレンジワインも美しい琥珀色をしている。魅力はどこにあるのだろうか。
「アプリコットやビワ、カキのようなオレンジ色の果皮の果物の香りがあります。ポリフェノールもかなり溶け込んでいるので、健康志向の人にも向いています」(大橋さん)
だが、注意すべき点もある。
「酸化防止剤を使わないワインが緩やかに酸化した結果として、琥珀色になるワインはずいぶんあります。もともと存在しなかった色が酸化して出てくるものは、オレンジワインではありません」(同)
大橋さんによると、25~30年ほど前からオレンジワインは国内に入ってきていた。当時は「オレンジワイン」という呼称がなく、白ワインの一種として楽しまれてきた。
なぜここ数年で急激に認知度が上がったのか。
「ちょっと自分では言いにくいのですが……」とためらいつつ教えてくれた。
大橋さんは16年にジョージアの関係機関からオレンジワインの魅力をPRするアンバサダーの委嘱を受け、講演会などで繰り返し話題に取り上げてきた。MWの大橋さんが話せば、ソムリエは関心を持つ。ブームの裾野が広がったというわけだ。
東京・神宮前でワインショップ「ウィルトス」を営む中尾有さん(41)も、オレンジワインに魅せられた一人だ。
中尾さんが扱うオレンジワインは常時約100種類ほどで、国内では最大規模の品ぞろえだ。ジョージア、イタリア、フランス、スロベニア、スロバキアなどで、価格も2千円台と3千円台のものが多い。
「実はブドウ感が強く出ず、どちらかというと皮や、野生酵母が働くので、酵母感が強く出ます。ブドウの種類や熟成期間によって味わいはさまざまですが、甘くない、ドライな辛口が多い。かわいいラベルのものが多く、ラベルに直結するような楽しみやすい味。幅広い層に受け入れられると思います」(中尾さん)
(編集部・小田健司)
※AERA 2019年7月22日号より抜粋