

岡田惠和さん脚本のドラマ「奇跡の人」、朝ドラ「ひよっこ」などに出演してきた銀杏BOYZの峯田和伸さん。公開を控えた映画「いちごの唄」は、銀杏BOYZの7曲から作られた小説が原作だ。2人のコラボによって生まれた映画についての思いを聞いた。
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──コウタは不器用で冴えない、でも優しい心を持つピュアな青年。今の時代にこうした人物を描いた理由は?
岡田惠和(以下、岡田):彼のような美しさが肯定される物語を描きたかったんです。ひょっとすると彼のような人は現実世界では報われることはないかもしれない。周りの人たちも、こんなにいい人ばかりじゃないかもしれない。でも、救われてほしい、と。
峯田和伸(以下、峯田):演じてる古舘(佑太郎)君が、コウタそのものでしたよね。彼はミュージシャンで俳優でもあって、その点で後輩のような感じなんですが、いつももがいている。邪念も邪気もなくて、計算もできないから失敗もするんだろうけど、応援したくなる。今カッコいい人、多いじゃないですか。だから彼のような人にいてほしいと思う。
岡田:こんな世の中で「物語」を作るのは、やっぱり難しいですよね。でも僕は物語が現実のふりをする必要はない、と思っている。嘘なんだ、という自覚をもって作りたいし、だからこそ届くものがあるんじゃないかと。
峯田:最近は映画でも観ている人が主人公と一体になって没入できるような作品が多い。でもこの映画、この物語はそういう意味での「共感」とは違う気がするんです。そこがある種の「ファンタジー」かもしれないけど、僕はそれが新鮮だし、挑戦だと思った。甘いだけじゃなく、何パーセントかの苦み、毒が入ってる。それは岡田さんだけに表現できる世界だと思うんです。
岡田:ありがとう!(笑)
峯田:コウタが経験する青春の痛みやつまずきは、誰もが共感できる。そこが描かれているのが好きですね。リアルを突きつけてくる音楽や映画って本当にしんどい時には触れられない。本当にキツい時は誰にも会いたくないし、どんな映画も観たくない。でもどうでもいいようなものが意外と自分を救ってくれたり。軽いファンタジーとか。そういう経験が自分にはあって。