「僕は打者目線で見て選手を(球団に)推薦するんだけど、トニーは同じ選手を『もし日本人の投手なら、どうやってこの選手を打ち取る?』という視点で見てくれるんだ。だから僕が良いと思った選手をトニーに見てもらって『このバッターはこう攻めれば日本人の投手でも打ち取れる』と言われれば、それまで。逆に彼が『この選手なら日本のピッチャーにも対処できる』と言えば、そのまま推薦する。もちろん投手の場合はその逆もある」
ガイエルは元外野手で、バーネットは元投手。だが、どちらかが野手のみ、あるいは投手のみと偏ることなく、お互いの視点でチェックし合いながら、獲得候補をリストアップしているという。その中で重視しているのが、個々の選手の「性格」だ。
「良い選手を探そうとはしているけど、同時に僕は性格の良い選手を見つけようと思っている。たとえ能力の高い選手であっても、人間性が良くなかったらチームには馴染まないからね。難しいことではあるけど、能力があって人間性も良い選手を見つけることができたら、日本でも確実に成功する。だから僕らが欲しいのはトニーやスコットのような選手なんだ」
ガイエルが例に挙げたのは、現役時代は共にプレーしたバーネットであり、昨年までチームの抑えだったスコット・マクガフ(現ダイヤモンドバックス)。野手でいえば、昨年は一塁手としてベストナインに輝いたホセ・オスナなども、これに当てはまるという。
「ホセは本当に楽しい男なんだけど、一方で仕事に対する意識がものすごく高い。チームメイトともうまく馴染んでいるし、このチームでプレーすることを楽しんでいるんじゃないかな。彼のような選手を見つけることができたら、間違いなくチームにフィットするよ」
現役時代のガイエルも、性格の良さで知られていた。筆者が直接、取材したのは2010年からの2シーズンだけだったのだが、普段は常に穏やかな笑顔をたたえていた印象がある。グラウンド上ではハッスルプレーを惜しまぬ一方、死球の数が毎年2ケタを数えても、相手の投手に対して怒りをあらわにするようなことはめったになかった。