「診断以上に大切なのは、周囲の人間がその特性により本人が生活上どんなふうに困るかを見極めること、正しい対処スキルを身につけるために必要な手立てをどう伝えるのがよいかを知ることです。本人が自分の特性を知る『自己理解』と、教育機関や職場で自分の特性に合わせた『合理的配慮』を得るための『相談力』を身につけていけば、特性による生きづらさを軽減していけます」(高木医師)

 幼少期から安心できる生活環境で自己理解が進めば、スムーズに助けを求められるようになる。だからこそ、子どもたちにとって最初の社会となる教育現場での支援が欠かせない。

「各地の先生たちと勉強会や情報交換も行っていますが、有効な支援ができるかは『生徒を理解して真剣に向き合う先生の存在』によるところも大きいようです。地方や地域の文化によって差があるのも事実です」(同)

 必要とされる理解と協力とはどんなものだろうか。

「たとえば英語が苦手な人は、現地で辞書ツールを手に『意思疎通の困難さ』を軽減させようとします。現地の人も、片言の英語から理解しようと歩み寄ってくれます。これを発達障害のある人に置き換えてみてください。彼らも不具合な特性を抱えながら、生きづらさを軽減させる手段やスキルを身につけようとしています。社会全体に発達障害とその特性に対する正しい理解と配慮が広がることが大切です。私たち医師も含め、啓発と連携に努めていかなければいけないと痛感しています」

(ライター・豊浦美紀)

AERA 2019年6月24日号

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