わたしのアメリカン義母は、「子どもに作ってやったお弁当は2種類しかない」と言っていました。前述のPB&Jサンドイッチと、ペパロニ、チーズ、マスタードをパンにはさんだだけの、PB&Jにも負けず劣らずのシンプル・サンドイッチ、この2種類だけ。夜勤もある看護師をしていて、子どもは4人。ダンナは料理ができないので戦力外。全員のお弁当を作る時間も献立を考える時間も取れず、日によって野菜やフルーツをプラスしながら、2種類のサンドイッチでぐるぐる日々を回していたそうです。それでも、4人の子どもたちは痩せも太りもせず、病気もせず、健康に育っています。そして、皆お母さんが大好きです。
もし手の凝ったお弁当が愛の証だとしたら、アメリカの子どもたちは皆、愛に飢えてカラカラに干からびていることでしょう。親の愛情って、お弁当だけで伝えるものではないですよね、きっと。
※注1 「ジェリーでビタミン・ミネラルが採れるというのは思い込みで、実際は糖分の塊でしかありません。ジェリーの代わりに砂糖不使用のジャムやフルーツのスライスを使いましょう」と健康志向派はアドバイスしています。
※注2 食パン1枚にピーナッツバターを塗り、もう1枚にジェリーを塗るのか、それとも1枚にピーナッツバターを塗ってからその上にジェリーを塗るのかは、ミルクティーを作る際に紅茶を先にティーカップへ注ぐのかミルクを先に注ぐのかと同じく、いまだ結論の出ない難問であるとかないとか。
※AERAオンライン限定記事
◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi