今にも大粒の雨が落ちてきそうな寒空の下、白いTシャツ姿の山本太郎参議院議員が登場すると、数十人の聴衆からどっと拍手が湧いた。「れいわ新選組」を立ち上げて以降、全国各地で開催している街頭演説は、演出や趣向が独特だ。
街頭に大型のモニターを設置。国会の資料や、政府に提出した質問主意書の回答などから導き出したデータを示しながら約2時間、「れいわ新選組」の八つの公約について息つく間も無く話し続ける。
政治や経済の小難しい話を2時間聞かされるのだから、聴衆もうんざり──と思いきや、そこは元芸能人。説明は明快。テレビや舞台で鍛えた弁舌で、聴衆を飽きさせない。さながら、政治解説に定評があるジャーナリストが司会を務めるテレビのワンシーンを見ているようだ。
「わかりやすいというのはとくに重要なんです。役所の官僚にレクを受ける際、いつも高校中退の山本太郎でも分かるように説明してくださいって言っています。ただでさえ政治は難しいと思われていますから」
山本議員の根底にあるのは「怒り」だと語るのは、政治の素人だった頃から本人を支え、自らを「国会議員・山本太郎の製造責任者の一人」だと語る作家・雨宮処凛氏(44)だ。山本議員の支持者には、いわゆる「保守」や「スピリチュアル女子」もいると雨宮氏は言う。
「当初は原発事故への怒りで気持ちばかり前のめりでしたが、6年間を経て貧困や格差で困窮している生活者に謙虚に耳を傾けることができる国会議員に化けた。本当に勉強熱心なんです。彼を支持しているのは、左右のイデオロギーではなく、この社会に生きづらさを感じる幅広い年代の人々。彼自身も失われた20年の当事者ですから」
街頭演説に集まった人々を取材していると、ある特徴が浮かび上がる。一つは、2年前「まっとうな政治」をスローガンに掲げて立ち上がった枝野幸男衆議院議員率いる立憲民主党の支持者が多いことだ。演説を初めて生で聞いたという女性(34)は、立憲民主党にも寄付したと明かした上でこう続ける。