俳優・歌手として活躍中の城田優。ミュージカルでスタートしたキャリアは、今年20周年を迎える。主演中の「ピピン」と11月に控える「ファントム」、そして日本のミュージカルにかける思いを語った。
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ミュージカル日本語版「ピピン」初日の2カ月ほど前、城田優(33)はその稽古と、演出と主演を兼ねる11月から上演の「ファントム」の準備を掛け持つ多忙な日々の中にあった。
城田優(以下、城田):職業病ですよね。ピピンのこともファントムのことも、舞台のことを考えない日はない。ファントムでは演出家なので、決めなければいけないことがたくさんある。最近、マッサージに行っても「脳が疲れている」と言われることが多くて(笑)。
「ピピン」は、城田演じる若き王子が自分の人生を見つけるまでを描いた作品だ。5年ほど前、ブロードウェーの劇場で一観客として出合った。
城田:衝撃でした。シルク・ドゥ・ソレイユを観ながら、ミュージカルを観ているような、それでいてサーカスのような。トニー賞を受賞したパティーナ・ミラーは登場するなり、観客の心をつかんでいた。拍手喝采でショーが一時中断する“ショー・ストップ”が、何度も起きていた。観客は総立ちで、劇場は温かい雰囲気に包まれていて。いまも鮮明に覚えています。
今回のピピンでは、ブロードウェーのクリエイティブチームがスタッフを担当してくれています。あとは日本版のキャストがその高い足場にのれるかどうか。観に来てくれたお客さんが、帰り道、「ピピンやばかったね」と話が止まらなくなるような舞台にしたい。
観客は、映画館で映画を観る料金の10倍近いお金を払って、ミュージカルを観に来ます。1度しか観ない人が大半で、その1回がその人にとっての「作品」になる。以前は、50回の公演があったら、50回演じる自分の目線で「40/50まできた」と考えていた。いまは、お客様目線で1/1×50なんだ、と。経験値からシンプルに考え方が変わって、責任を強く感じるようになりました。毎回が生だから、やり直しがきかない。だけどそこがおもしろい。達成感みたいなものは、ほかのどの仕事より高いと思います。